ノートパソコンと言えば、ダイナブック。
パーソナルユーザーだけに留まらず、
多くの企業からBTOの発注が相次いでいたらしい。
超薄型でカッコいいと、世界も注目した。
かつて市場を席巻したヒット商品が生まれた場所、
東芝青梅工場の敷地が既に売却され、
事業所の建屋は間もなく解体される運命にあるという。
人なり企業なり、栄華盛衰の流れは残酷物語でもある。
またひとつ、多摩地域を支えた柱が抜けてゆく。
![東芝 青梅](http://tamaranzaka.net/wp-content/uploads/2017/02/tom02.jpg)
交差点角の大きな看板
間もなく取り外されてしまうだろう
時代の変化か、粉飾の穴埋めか
大型電算機の生産拠点として1968年に操業開始した東芝青梅事業所。
右肩上がりの高度経済成長によって、多摩の地をしっかりと踏みしめて来た。
パーソナルワープロRUPOを始め、数々のハイテク製品を普及させる原動力となり、
パソコンの出荷は昼夜を問わず、フル回転の操業を展開していた。
最近では生産拠点としての役割を終え、開発拠点として機能していたという。
研究開発の目的だけでは、やはりこの敷地は広すぎたのか?
![東芝 青梅](http://tamaranzaka.net/wp-content/uploads/2017/02/tom04.jpg)
高くひるがえる
優良企業のフラッグシップは何処へ
以前私はこの工場の生産ラインを見学させてもらったことがある。
広々とした通路が確保され、人の動線に資材や部品が置かれていることなど無く、
出荷前の商品も、所定の場所に所定の高さ以上に積まれていることなど無かった。
それでも見学者は、所定の安全靴と帽子を着用しなければ、フロアに入れない。
まかり間違っても労働事故は起こさないという、安全管理体制の徹底ぶりは、
世界に冠たる東芝のプライドを感じさせるに充分であった。
そこに一体何人くらいの人達が働いていたことだろう。
24時間休むことなく、交代制で入れ替わる労働者の月間延べ人数を、
説明員の方から聞いていたはずだが、すっかり忘れてしまった。
ラインフロア内に私語は無い、彼らは黙々と、粛々と自分の責任範囲の作業を、
ひたすら正確に処理し、次の工程へ送り出す。
それだけに、眺めまわしただけでは人数の見当すら付きかねる。
あれだけの人達があれだけ忙しく動き回っているのにも関らず、埃ひとつ無く、
ピカピカに磨き上げられた、緑色の床が印象的だった。
![](http://tamaranzaka.net/wp-content/uploads/2017/02/tom06.jpg)
構内には何故か大型観光バスが2台
見学ツアー? まさか・・・
![東芝 青梅](http://tamaranzaka.net/wp-content/uploads/2017/02/tom05.jpg)
バス停の名称も変えなくてはならないだろう
影響は広範囲に及ぶ
米国内での原子力事業で数千億の損失も?
野村不動産におよそ100億円で売却されたという青梅事業所。
去年のうちに売却は完了し、今は東芝が賃料を支払っている立場であるという。
しかし、粉飾会計は400億円規模であると伝えられ、
それによって損害を受けた株主の集団訴訟で、請求されている賠償額は、
現時点で19億円に達すると言う。
加えて、海外事業での赤字も追い打ちをかけているようだ。
なお、青梅事業所は2017年3月末に閉鎖し、青梅事業所に勤務する当社および、
当社グループ従業員は、移転した先にて勤務を継続する予定です。
事業閉鎖に追い込まれた企業が、判で押したように発表するプレスリリース。
救済されるのは、あくまで「グループ企業」の従業員まで、である。
青梅工場で働いていたのは、そうしたプロパーの社員ばかりではない。
下請け企業、取引先企業の多くは、体力の無い中小企業であると思われる。
それに、あれだけピカピカに磨かれていた床は、稼働の合間を縫うようにして、
絶えず清掃業者の人達が、磨き込んでいたからに違いない。
そうした末端の労働者達は、今年4月以降もう仕事は無い。
JR青梅線、小作駅から事業所へ向かう途中には、労働者が利用する細やかな飲食店街。
これらのお店も、当然ながらその存続が危ぶまれている。
歴代3社長によるとみられる不適切な粉飾会計事件。
オリンパスと並んで、歴史上の汚点となりうる経済事案であろう。
現行役員の報酬カット、賞与の支給中止などが報道されているが、
事件に関与したとされる人物の刑事告発は、どうやら困難であるらしい。
彼らにとって、役員報酬のカットなど痛くも痒くもないだろう、
既に相当の財を成し、一等地に邸宅を構えるセレブ達にとっては、
「何処吹く風」の事業所閉鎖なのである。
こうした輩に「私財没収」などの厳罰を与えることの出来ない経済大国、
それが日本である。
![東芝 青梅](http://tamaranzaka.net/wp-content/uploads/2017/02/tom07.jpg)
紅梅の季節
来年の今頃は、もうこの風景は無いだろう。
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