八王子市上恩方町。
夕焼け小焼けの作詞者「中村雨紅」の出身地であることから、
「夕焼け小焼けの里」としてよく知られています。
そういえば、JR八王子駅のホームに流れるメロディーも夕焼け小焼け。
数ある童謡の中でも、最も有名なもののひとつですね。
今回はそんな「夕焼け小焼け」にまつわるお話です。
夕やけ小焼けで足が棒に?
中村雨紅(なかむらうこう)が、夕焼けに染まる故郷をイメージして作詞したといいます。
それも実際に八王子駅から上恩方までの約16キロの道のりを、
徒歩で帰る途中だったというのですから驚きです。
当時(大正8年)雨紅の勤務先は荒川区日暮里、
まさか通勤していたわけではないでしょうね。
交通インフラの発達した現代ですら、それはかなり無茶な通勤距離です。
小学校の音楽教師であった雨紅は、きっと日暮里に下宿でもしていたのでしょう。
夏休みにでも入って、八王子の実家まで電車で帰ることにしたのだと思いますが、
当時の山手線はまだ環状運転ではなく、「Cの字」運転だったらしく、Cの上部は上野駅。
従って雨紅は田端と池袋で乗り換え、新宿に出たものと想像されます。
(調べてみると、どうも運転区間がこま切れだったらしいのです)
新宿からやっと中央線に乗って八王子まで、どのくらいの時間がかかったのでしょうかね?
しかし最も長時間を要したのは、八王子駅から上恩方までの「徒歩区間」に違いありません。
上の地図を御覧頂ければわかる通り、ここを歩く気はしませんね、普通。
でもバスもタクシーも無ければ、歩くしかありません。
すっかり夕焼け小焼けで日が暮れてしまった頃に、やっと辿り着いた我が家。
その道すがら、足を棒にしながら雨紅は何を思って言葉を並べたのでしょうか?
驚くべき詞の解釈は、記事の最後に御紹介します。
山のお寺の鐘は、只今工事中?
「興慶寺」 歌詞の中に出てくる「山のお寺」、許可を得て撮影させて頂きました。
山の中腹に鐘楼が見えます、この鐘が鳴ったんですね。
あいにく鐘楼までの通路が工事中で通行出来ず、このアングルからの撮影のみとなりました。
まさに「山のお寺」です、行くのはちょっと大変でしたが、
静かでしんみりとした良い所です。
「宮尾神社」 雨紅はここの宮司の息子さんでした。(次男か三男か両説あり)
石段の左側に「夕焼け小焼けの歌碑」が見えます。
これが歌碑です、雨紅直筆と言われています。
実は歌碑の写真を載せることは出来ても、ブログ記事に歌詞を記すことができません。
中村雨紅没後まだ50年経っていないため著作権が存在し、
無断で掲載するわけには行かないのです。
但し作曲者の草川信は没後50年以上経過しており、曲の著作権は切れています。
その歌詞についてですが、雨紅が故郷の情景を記したものであることは前述しましたが、
もうひとつの「夕焼け小焼け」があるらしいのです。
或る童謡研究者の解釈によると、1番と2番を通じて特別な意味になるといいます。
容易に信じられない話ではありますが、敢えて御紹介しておこうと思います。
2番の歌詞、御存知ない方はどうぞググって下さい。(^^;
おててつないでみな何処へ?
「夕焼け小焼け」が中村雨紅によって作詞されたのは大正8年のことでした。
その後草川信によって曲が付けられ、公に発表されたのは4年後の大正12年のことです。
その大正12年9月1日に関東大震災が発生しました。
震災によって親を亡くした子供が大勢いたことから、そうした子供達を励ます意味で、
この「夕焼け小焼け」の歌が急速に唄い広められていったというのです。
山のお寺の鐘が鳴る
お寺は死者を弔うところ。
亡くなった父さん母さんの魂は、お寺がちゃんと供養していますよ。
ほら鐘が鳴っているでしょ。
カラスは死者の使い
天国の父さん母さんが迎えをよこしてくれました、
お手々つないで、皆で帰りましょう。
子供達は喜んで父さん母さんの元へ帰ってゆきました。
子供が帰ったあとからは・・・ 空にはきらきら金の星。
天に帰った子供達は、夜空の星となりました。
いったい何処が励ましになっているのか、さっぱり分かりませんが、
ここは現代人の感覚で判断してはならない所でしょう。
時代は大正、親を亡くした子が幸せに成人出来る時代だったかというと、やはり疑問です。
まだまだ世相は暗く、厳しいものだったのではないでしょうか。
子供の頃何も考えず口ずさんでいた童謡も、それなりの研究者の手にかかれば、
思いもかけない意味と、その時代が浮き彫りになります。
午後4時30分、この記事を書いている最中に窓の外からチャイムの音が聞こえて来ました。
そのメロディーはまさしく「夕焼け小焼け」。
本当に夕暮れが早くなりましたね、季節の移り変わりの速さを感じます。
この曲を「夕刻のチャイム」として採用している自治体が多数あると聞きます。
読者の皆さんのところでは、何が流れていますか?
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