
三億円事件の五十年 最終回 遠ざかる昭和
自分は悪人であると自覚する人は、どちらかというと善人だ。 厄介なのは、加害者のくせに被害者の顔をして生きている輩だ。 その善人ヅラで、他人だけでなく自分自身をも欺いている連中だ。
多摩で生まれ多摩で育った筆者が多摩の街を綴ります
自分は悪人であると自覚する人は、どちらかというと善人だ。 厄介なのは、加害者のくせに被害者の顔をして生きている輩だ。 その善人ヅラで、他人だけでなく自分自身をも欺いている連中だ。
冬場はやはり富士山の話題が多くなるように想う。 中央線三鷹駅の西側にある年代物の跨線橋も、 多摩地域では有名な「富士山スポット」である。
昭和四十三年十二月十日、午前九時前、篠突く雨。電信柱の陰から、日本信託銀行国分寺支店の様子をじっと覗う男が居た。 銀行の通用口から銀色のジェラルミンケースが運び出されて来た。 犯人の人生で、最も長い一日が始まった。
五日に一度風が吹き、十日に一度雨が降る。 安定した天候とはそういうもので、晴れれば良いというものでは無い。 埼玉県に在って、東京に飲料水をもたらす恵みの湖、狭山湖。
銀行から金を奪ったところで、誰も悲しむ者などいない。 東芝の社員には少し気の毒だが、数日遅れでもボーナスは必ず支給される筈だ。 まして、銀行員に刃物を突き付けたりなどしない。 芝居を打つのだ、一世一代の大芝居で見事に出し抜いて見せる。